
公開日 2013/03/22 138分
腹にズンとくる見応えという点では東西随一とも思えるポール・トーマス・アンダーソン作品。
今回も偏執狂的な男が題材だ。
フィリップ・シーモア・ホフマン演じる男、新興宗教団体の"マスター"は、単に偏執狂的なだけではなく、当然のごとく只者ではない。
何よりパワフルで人を惹き付ける力がある。
そして、この男に傾倒していくホアキン・フェニックス。この男は更に病的だ。
オープニングからホアキン・フェニックス演じるベトナム戦争帰りの兵士は、人生に倦んでしまっているのが見てとれる。
既に精神的に破滅しているのに、更に破滅的な何かに向かっているようにも見える。
この目的なく、さ迷うこの男は『タクシー・ドライバー』の主人公とダブって見える。
『タクシー・ドライバー』の主人公のように、駆り立てる何かを見つけさえすれば、失うものなどなく傾倒していく。
そんな恐さを醸している。
印象的なシーンが幾つもある。
船が起こす波の映像。そこに意味を汲み取るのは難しいのかもしれないが、本作を思う時、この映像が思い浮かぶということは、象徴的な映像として成功していると思わざるを得ない。
例えば、“マスター”たちと砂漠でフルスピードのバイクを駆るシーン。
スリップやバウンド、エンジントラブルなどが起これば、いずれにせよ倒れたら即死だ。
血気盛んでやり場のない若者たちのようにさえ見えるこの遊びの中で、唐突にホアキン・フェニックス演じる男は、この“マスター”のもとから去ってしまう。逃れるがごとく。
敢えて作為的に作った生死の間で、自分の居場所のなさを決定的に感じたのだろうか。
『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』程の虚無感を湛えた作品ではないものの、強烈なエネルギー、強烈なむなしさをない交ぜにしながら、ハートに訴えてこられる一作だ。
原題 THE MASTER
製作国 アメリカ
製作 Weinstein Company
製作 Ghoulardi Film Company
製作 Annapurna Pictures
配給 ファントム・フィルム
監督 ポール・トーマス・アンダーソン Paul Thomas Anderson
製作 ジョアン・セラー Joanne Sellar
製作 ダニエル・ルピ Daniel Lupi
製作 ポール・トーマス・アンダーソン Paul Thomas Anderson
製作 ミーガン・エリソン Megan Ellison
製作総指揮 アダム・ソムナー Adam Somner
製作総指揮 テッド・シッパー Ted Schipper
脚本 ポール・トーマス・アンダーソン Paul Thomas Anderson
撮影 ミハイ・マライメア・Jr Mihai Malaimare Jr.
プロダクションデザイン ジャック・フィスク Jack Fisk
衣装デザイン マーク・ブリッジス Mark Bridges
音楽 ジョニー・グリーンウッド Jonny Greenwood
出演 ホアキン・フェニックス Joaquin Phoenix
出演 フィリップ・シーモア・ホフマン Philip Seymour Hoffman
出演 エイミー・アダムス Amy Adams
出演 ローラ・ダーン Laura Dern
出演 アンバー・チルダーズ Ambyr Childers
出演 ジェシー・プレモンス Jesse Plemons
出演 ラミ・マレック Rami Malek