四十七人の刺客

店舗イメージ

公開日 1994/10/22  129分


★★★★★ 5.0


これまでに数えきれないほどドラマ化、舞台化、映画化された題材だ。
分かりきったストーリーは悪いばかりではない。
説明は省けるし、感情移入も得やすい。配役も評判となる。
古典には古典なりの旨味もあるものだなと改めて思う。

さて本作の切り口だが、赤穂浪士をタイトルの通り、刺客として描いているのが特長的だ。
内蔵助はじめ、浪士の誰一人として「主君の無念」や「仇討ち」を言葉にしない。
更に言えば、浅野内匠の刃傷に至った理由さえ判らなくてもよいのだ。
討ち入りの動機は、誇りを傷つけられたことへの報復のみである。
「仇討ち」とは世間を味方につけ、相手を追い詰めるための名目に過ぎない。
言わば戦略である。

市川崑作品としては、かなりオーソドックスに撮られた作品だと思う。
らしさは出ているものの、映像として強烈な印象を残すものはなかった。
『どら平太』もそうだったが、殺陣の映像には物足なさを感じた。

高倉健の内蔵助は色男が過ぎる。
その色恋と討ち入りの過程がうまく絡まないので、宮沢りえらの女優の悲恋が際立たない。
色恋と男気のバランスが取れないダメな主人公という作品は間々あるが、この内蔵助は余り魅力的とは思えなかった。
高倉健のリーダー役は珍しいが、せっかくの漂う男気の説得力が勿体ない。
意外というか相変わらずというか、妙に上手いと思ったのが板東英二。
善人とも悪人ともとれる薄笑いのような表情が意味深さげでいい。

さて、実際に吉良邸はこのような要塞化していたのだろうか。
結局、刃傷沙汰の原因は語られない。
それが想像を掻き立て、今なお語り継がれる所以でもあるのだろう。
泰平の世の中にあって、侍として散った浪士には、今の世の中にも訴えるものがあると知らされた。

原題  四十七人の刺客

製作国 日本
製作 東宝
配給 東宝

監督 市川崑 Ichikawa Kon
製作 高井英幸 Takai Hideyuki
製作 萩原敏雄 Hagiwara Toshio
製作 稲見宗孝 Inami Munetaka
製作 鍋島壽夫 Nabeshima Hisao
製作 進藤淳一 Shindoh Junichi
製作 島谷能成 Shimatani Yoshinari
原作 池宮彰一郎 Ikemiya Syoichiro
脚本 池上金男 Ikegami Kanao
脚本 竹山洋 Takeyama You
脚本 市川崑 Ichikawa Kon
撮影 五十畑幸勇 Isohata Yukio
美術 村木与四郎 Muraki Yoshiro
衣装デザイン 二宮義夫 Ninomiya Yoshio
衣装デザイン 乾保直 Inui Yasunao
衣装デザイン 斎藤育子 Saitou Ikuko
編集 長田千鶴子 Osada Chizuko
音楽 谷川賢作 Kanikawa Kensaku

出演 高倉健 Takakura Ken
出演 中井貴一 Nakai Kiichi
出演 森繁久彌 Morishige Hisaya
出演 石坂浩二 Ishizaka Koji
出演 岩城滉一 Iwaki Kohichi
出演 宇崎竜童 Uzaki Ryudo
出演 井川比佐志 Igawa Hisashi
出演 山本學 Yamamoto Gaku
出演 松村達雄 Matsumura Tatsuo
出演 神山繁 Kouyama Shigeru
出演 中村敦夫 Nakamura Atsuo
出演 浅丘ルリ子 Asaoka Ruriko
出演 黒木瞳 Kuroki Hitomi
出演 清水美沙 Shimizu Misa
出演 宮沢りえ Miyazawa Rie
出演 古手川祐子 Kotegawa Yuko
出演 西村晃 Nishimura Kou
出演 橋本淳 Hashimoto Atsushi
出演 今井雅之 Imai Masayuki
出演 石橋蓮司 Ishibashi Renji
出演 石倉三郎 Ishikura Saburo
出演 小林稔侍 Kobayashi Nenji
出演 小林昭二 Kobayashi Syoji
出演 尾上菊之助 Onoe Kikunosuke
出演 板東英二 Bando Eiji