月に囚われた男

店舗イメージ

公開日 2010/04/10  97分


★★★★★★★ 7.0


チープなようでもあり、高度なようでもあるセット。
月の裏側。居るのは主人公一人のみという静寂感。
これらが手伝って、作品全体を覆う独特に孤独な雰囲気がいい。
これが監督の計算によるものなら、デヴィッド・ボウイの息子はなかなかの才能の持ち主かもしれない。今後の作品を待ちたい。

ネタバレになってしまうが、何よりも物語の中核をなすクローンの描写が鋭い。
自身がクローン(肉体だけではない完全なコピー)であると知ることは、アイデンティティの喪失であり、ある意味、死を迎えるのと同様であるように描かれる。
記憶が単なるデータでしかない時、それに基づく感情も、意志も、希望さえもデータから誘導されたものでしかないのだ。
人間である主人公にも、彼と話すコンピューターにも、アイデンティティは見当たらない。
記憶と死生観を直結してみせ、その記憶がエセと突きつける展開には、あからさまに「死」を感じてしまって気分が悪くなるほどだった。
彼ら登場人物の存在や価値を自分自身と重ねた時に、気味の悪い恐怖を感じる。恐ろしい作品だ。

これらを描くことに主題を置いているのなら、極端に省かれた結末にも納得がいく。
偏った描写も多いが、このような「芯」があるところ、「観せたい」「訴えたい」意志が窺える作品は好きだ。
舌足らずな印象や未完成で粗削りな印象さえ好ましく思える。

原題  MOON

製作国 イギリス
製作 Liberty Films UK
製作 Lunar Industries
製作 Stage 6 Films
製作 Xingu Films
配給 ソニーピクチャーズエンターテインメント Sony Pictures Entertainment Japan lnc.

監督 ダンカン・ジョーンズ Duncan Jones
製作 スチュアート・フェネガン Stuart Fenegan
製作 トルーディ・スタイラー Trudie Styler
製作総指揮 マイケル・ヘンリー Michael Henry
製作総指揮 ビル・ザイスブラット Bill Zysblat
製作総指揮 トレヴァー・ビーティー Trevor Beattie
製作総指揮 ビル・バンゲイ Bil Bungay
原案 ダンカン・ジョーンズ Duncan Jones
脚本 ネイサン・パーカー Nathan Parker
撮影 ゲイリー・ショウ Gary Shaw
プロダクションデザイン トニー・ノーブル Tony Noble
衣装デザイン ジェーン・ペトリ Jane Petrie
編集 ニコラス・ガスター Nicolas Gaster
音楽 クリント・マンセル Clint Mansell

出演 サム・ロックウェル Sam Rockwell
出演 ドミニク・マケリゴット Dominique McElligott
出演 カヤ・スコデラーリオ Kaya Scodelario
出演 ケヴィン・スペイシー Kevin Spacey