肖像

店舗イメージ

公開日 1948/8/3  73分


★★★★★★ 6.0


黒澤明のシナリオ全集を持っている。本作のシナリオも既読であり、その黒澤節を気に入ってはいたのだが、レンタルショップには当然なく、映像は諦めていた。ところが、偶然にもU-NEXTで見つけたことから鑑賞に至った。サブスク様、様である。

物語は名作『生きる』の雛形のようでもある小品。
引っ越し荷物は牛に引っ張らせるんだ。
不動産屋の妾であり、気儘に暮らしてきた主人公が、間借りした画家一家に感化されるうちに、次第に自分の生き方を見出していくストーリー。

街に出れば欲しいものだらけで目が眩むという主人公が、やりたいことのためなら何を食べたって生きていくことはできると言えるまでまでになる変遷、心の成長が描かれる。
画家の一家がいい。嫁久美子役の三宅邦子がいい。

作品の底辺に流れるのは黒澤らしい青いヒューマニズム。
青いというのは悪い意味ではなく、この青さが魅力である。
黒澤の多くで語られる、自分の行動を、自身の不遇さや環境などの他責にするな、ましてや犯罪に手を染めるな、同じ環境でも頑張っている人がいるという理屈。このためか本作でも主人公の生い立ちや境遇は語られず、今後も描かれない。

女性が主人公というのは珍しいが、当時は社会的に公認されていた妾というのが評価しづらい。

黒澤作品での映像表現で多用される、階段を下りていく姿、噂話をしながら登る者を交錯しながら幕を閉じる。

英題  THE PORTRAIT 

製作国 日本
製作 松竹大船
配給 松竹大船

監督 木下恵介 Kinoshita Keisuke
製作 小倉武志 Ogura Takeshi
脚本 黒澤明 Kurosawa Akira
撮影 楠田浩之 Kusuda Hiroyuki
美術 小島基司 Kojima Motoji
音楽 木下忠司 Kinoshita Chugi

出演 井川邦子 Igawa Kuniko
出演 佐田啓二 Sada Keiji
出演 小沢栄太郎 Ozawa Eitaro
出演 三浦光子 Miura Mitsuko
出演 三宅邦子 Miyake Kuniko
出演 藤原釜足 Fujiwara Kamatari
出演 東山千栄子 Higashiyama Chieko