
公開日 2023/5/12 159分
★★★★★★ 6.0
かなりトガッた演出が面白い。
鑑賞後に「あのシーンの意味は云々、云々」と考えさせられる映画だ。
最終盤の些細なエピソードだが、主人公が東南アジアの川で「泳いでもいいか」と尋ねるシーンがある。船頭の若者は「ダメだ。ワニがいる。『地獄の黙示録』の撮影で逃げ出したワニだ。」と答える。
『地獄の黙示録』はディレクターカット版まで何度も観ているが、ワニ?と「?」が頭に渦巻いた。舞台がベトナムであることの説明にはなるが、本作で告発、ディスる必要はなにもないので、おそらくこれもテーマの一つであるSNSや噂の不確かさを表現しているのだろう。
ただ、この台詞を真に受ける観客も居ることは想像に難くないので、このシーン自体が危険な表現と言わざるを得ない。
ジュリアード音楽院の学生の貧乏ゆすり。観客の誰もが気になる。後のシーンで回収されるのだが、このような作為的な伏線が多々ばら撒かれている。
この作為的さが際立っており自然な展開とは感じないが、私は作劇として楽しめた。
組織を統率する者にはある程度、君主的なリーダーが生まれる可能性はあるだろう。
それが芸術的な分野で、努力型で且つ才能豊かであれば尚更と思う。ただ現在は「才能」と「評価」は表裏一体であり、「評価」はSNSで大きく左右されることがある。
また、作品のみではなく、作者や関係者も含めて評価することが主流だ。
ウディ・アレン然り、モーガン・フリーマン然り。
本作の主人公は女性且つLGBTQにあたるが、キャラクター自体は男性でよくあるタイプであり、「今」的に、女性転換版ともいえる。
広く受け入れ難い主人公だけに、ヒット作にならないのは想像に難くない。
賞レースあっての作品、と思える。勿論、それは悪いことではない。
原題 TAR
製作国 アメリカ
製作 Focus Features
製作 Standard Film Company
製作 EMJAG Productions
配給 ギャガ
監督 トッド・フィールド Todd Field
製作 トッド・フィールド Todd Field
製作 アレクサンドラ・ミルチャン Alexandra Milchan
脚本 トッド・フィールド Todd Field
撮影 フロリアン・ホーフマイスター Florian Hoffmeister
プロダクションデザイン マルコ・ビットナー・ロッサー Marco Bittner Rosser
衣装デザイン ビナ・デグレ Bina Daigeler
編集 モニカ・ヴィッリ Monika Willi
音楽 ヒルドゥル・グーナドッティル Hildur Guthnadottir
出演 ケイト・ブランシェット Cate Blanchett
出演 ニーナ・ホス Nina Hoss
出演 マーク・ストロング Mark Strong
出演 ジュリアン・グローヴァー Julian Glover
出演 ノエミ・メルラン Noemie Merlant