野菊の如き君なりき

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公開日 1955/11/29  92分


★★★★★★★ 7.0


小説「野菊の墓」の映画化。
私の学生時代には「〇〇文庫の100冊」の定番作品だったが未読。

映画はいい意味でセンチメンタルの極致的作品。
従兄弟はまだしも、女性が2才上の年の差婚はあり得なかった時代の悲恋の物語。
このような映画(原作)が積み重なって、偏見を穿ち、時代は変わってきたのだろう。
年の差婚はもとより、女性にとって結婚が人生を決める時代というのも見て取れる。

主人公2人の演技はつたなく、無邪気で淡い恋心が深い恋心への変遷する過程が掴み辛い。ただ、このつたなさが初々しさとも受け取れる。器用でないことの良さと捉えたい。

一方で、杉村春子、浦辺粂子、田村高廣の演技が素晴らしく、特に浦辺粂子、田村高廣は、ほぼ一言で作品を決定づけるほどの台詞を吐いている。

回想シーンを楕円のフレーム内で描く表現は、鑑賞開始時は違和感があるが次第に気にならなくなる。ゆったりした導入に飽きそうになるのも同様だ。
回想中の時制も一定ではなく、回想から回想に飛んだりもするのだが、脚本の上手さからだろう、気にはならない。

観終わってみると、これをよくリメイクする気になったなと思うほどに完成度の高い作品だと思う。
わかっちゃいるけど泣ける。そんな作品。
文芸路線とこの主人公2人の演技から、松田聖子でもイケると、リメイクが企画されたのかな。

原題  野菊の如き君なりき 

製作国 日本
製作 松竹大船 Syochiku Ofuna
配給 松竹 Syochiku

監督 木下恵介 Kinoshita Keisuke
製作 久保光三 Kubo Mitsuzo
原作 伊藤左千夫 Itou Sachio
脚色 木下恵介 Kinoshita Keisuke
撮影 楠田浩之 Kusuda Hiroyuki
美術 伊藤憙朔 Ito Kisaku
音楽 木下忠司 Kinoshita Chugi

出演 笠智衆 Ryu Chisyu
出演 田中晋二 Tanaka Shinji
出演 有田紀子 Arita Noriko
出演 松本克平 Matsumoto Kappei
出演 杉村春子 Sugimura Haruko
出演 田村高廣 Tamura Takahiro
出演 山本和子 Yamamoto Kazuko
出演 小林トシ子 Kobayashi Toshiko
出演 浦辺粂子 Urabe Kumeko