
公開日 2020/10/30 142分
★★★★★ 5.0
3億円強奪事件とともに、昭和後期の2大未解決事件といわれる、グリコ・森永事件の真相を追った物語。
3億円事件の記憶のある私には、当時盛んにドラマ化された3億円事件に比べて、グリコ・森永事件はドラマ化された記憶がない。企業を脅迫した事件性や、情報の気密性の高まり、模倣犯への牽制など、ドラマ化され難いという観点だけでも世の移ろいを感じてしまう。
さて、物語の骨格をなす事件の動機について、本作では株価操作による利益享受と学生運動家の余燼が動機として描かれている。
警察がグリコ・森永の株売買を追わなかった筈はないし、「滾り」と表される元学生運動家の怨嗟も当時の犯人たちの暮らしぶりからピンとくるものではない。
元学生運動家が警察を始めとした権力と、企業を始めとした金持ちを同一の標的とするのにも十分な説明をされていない。
この物語を支えるのは期せずして事件に巻き込まれてしまった幼児であるが、時効を過ぎた事件にそこまでの切迫感を感じることがあるだろうか。
この事件を追う記者に大義はなく、執拗に追う執念の源泉も見え辛い。
これらに対して、家族や人生そのものを犠牲にし、死の淵にいた宇野祥平こそ凄まじい。
「あなたは?曽根さんは、どんな人生やったんですか?」という重い台詞。
この人物と家族によって、事件の罪深さを突き付けられる。
この人間臭さによって、ようやく仮説に基づく物語が肉付けされる。
小栗旬と星野源の印象や事件の真相よりも、事件が明らかになることで、
宇野祥平の今後が平穏になることを願うような作品であった。
尚、邦画では珍しく、エンディング曲が印象的(「振り子」Uru)な作品でもあった。
原題 罪の声
製作国 日本
製作 「罪の声」製作委員会
製作 講談社
製作 TBS
製作 WOWOW
製作 トライストーン・エンタテイメント
製作 ジェイアール東日本企画
製作 TCエンタテインメント
製作 朝日新聞社
製作 毎日新聞社
配給 東宝
監督 土井裕泰 Doi Nobuhiro
原作 塩田武士 Shiota Takeshi
脚本 野木亜紀子 Nogi Akiko
撮影 山本英夫 Yamamoto Hideo
編集 穗垣順之助 Hogaki Junnosuke
音楽 佐藤直紀 Satoh Naoki
主題歌 Uru Uru
出演 小栗旬 Oguri Syun
出演 星野源 Hishino Gen
出演 松重豊 Matsushige Yutaka
出演 古舘寛治 Furutachi Kanji
出演 市川実日子 Ichikawa Mikako
出演 火野正平 Hino Shouhei
出演 宇崎竜童 Uzaki Ryudo
出演 梶芽衣子 Kaji Meiko
出演 宇野祥平 Uno Syouhei
出演 原菜乃華 Hara Nanoka