ナイチンゲール

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公開日 2020/03/20  136分


★★★★★★ 6.0


19世紀オーストラリア・タスマニア島を舞台にした凄絶な復讐劇。
当時の英国のタスマニア島への植民地政策とブラック・ウォー。流刑地としての成り立ちとアボリジナルの絶滅などの歴史はまったく知らずに鑑賞。

主人公はアイルランドから流刑されてきた女性。美しい歌声からナイチンゲールと呼ばれている。
理不尽に彼女を囲っている英国軍人にレイプされ、夫と赤ん坊を殺されたことによる復讐の追跡劇である。
タスマニアの原始の森で彼女をガイドするのがアボリジナルの男。
もう、「これでもか!」っていうほどの格差と差別と暴力の世界。
復讐の1人目を惨殺するシーン、アボリジナルを殺戮するシーンなど、むごたらしい演出が続く。

その主人公が突然変節し、銃を撃てなくなるところから、物語はトーンダウンする。
急に怖気づいたのか、殺し続ける果てにその意味を失ったのか、おそらく後者なのだろうが、そうなる切っ掛けは分からなかった。
復讐を引き継ぐ形になるのがアボリジナルの男性なのだが、もしかしたらアボリジナルの男性の復讐劇に転じたいがための演出だったのかもしれない。
主人公も自覚している通り、この時代に相手を激しく非難することで復讐を遂げられることはない。
この復讐バイオレンスからのトーンダウンは作品自体を大きく損なっているように思う。
ラストに昇る朝日は、復讐を引き継いだアボリジナルの、その人種自体の未来を映し、殺すことを諦めた主人公は、復讐の連鎖を断ち切ることによって得る未来を映しているのか。

知られざる歴史舞台における未来も顧みない激しい復讐への誓いと、象徴的な結末がアンバランスに感じられてしまうのが残念。

監督・脚本のジェニファー・ケントはオーストラリア出身の女性監督。『ドッグヴィル』では助監督を務めたらしい。


原題 THE NIGHTINGALE

製作国 オーストラリア
製作国 カナダ
製作国 アメリカ
製作 Causeway Films Causeway Films
製作 Made Up Stories Made Up Stories
配給 トランスフォーマー

監督 ジェニファー・ケント Jennifer Kent
製作 クリスティーナ・セイトン Kristina Ceyton
製作 ブルーナ・パパンドレア Bruna Papandrea
製作総指揮 ベン・ブラウニング Ben Browning
製作総指揮 アリソン・コーエン Alison Cohen
脚本 ジェニファー・ケント Jennifer Kent
撮影 ラデック・ラドチュック Radek Ladczuk
プロダクションデザイン アレックス・ホームズ Alex Holmes
衣装デザイン マーゴット・ウィルソン Margot Wilson
編集 サイモン・ンジョー Simon Njoo
音楽 ジェド・カーゼル Jed Kurzel

出演 アシュリン・フランチオージ Aisling Franciosi
出演 サム・クラフリン Sam Claflin
出演 ベイカリ・ガナンバー Baykali Ganambarr
出演 デイモン・ヘリマン Damon Herriman
出演 ハリー・グリーンウッド Harry Greenwood
出演 チャーリー・ショットウェル Charlie Shotwell
出演 ユエン・レスリー Ewen Leslie