判決、ふたつの希望

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公開日 2018/08/31  113分


★★★★★★★ 7.0


初めてのレバノン映画。
タイトルの通り裁判劇である。
個人的にはあまり好みでないジャンルなのだが、引き込まれてしまった。
レバノン人の男性とパレスチナ難民の男性との諍いが波紋を広げ、全国的な裁判劇へと発展するさまは、戦争さえも些細なことが引き起こすと想起させる。

発端は些細なこと。
アパート地区の工事を指揮していたパレスチナ難民(イスラム教)である現場監督ヤーセルは、そこに住むレバノン人(キリスト教)のトニーのベランダの排水管から水が撒き散らかされているのを見つけ、警告するが、かねてからパレスチナに反感を持っているトニーは無視する。
そのためヤーセルは勝手に配管工事をしてしまうが、それを見たトニーは修復された配管をハンマーで壊した上、水を浴びせる。
怒ったヤーセルはトニーに対して「クズ野郎」という言葉を吐き捨てる。
この悪態が許せないトニーは工事会社に乗り込んで抗議する。
上司に説得され、ヤーセルはトニーの自動車修理工場へ謝罪に出かけるが、そこではパレスチナを非難する演説が流れ、敵意むき出しのトニーから、パレスチナ人としては最大の侮辱となる決定的な言葉を投げつけられる。瞬発的にヤーセルはトニーを殴ってしまうのであった。

ここから物語は雪崩をうってゆく。
レバノンでなければ、相手がパレスチナ人でなければ、全国に広がるような話ではない。
裁判は、原告の妻の過去を始め、互いの弁護士が親子であることや、被告の難民時代の罪、原告の少年時代の記憶までも暴いていく。
ただショッキング過ぎる事柄ゆえに、作為と盛り過ぎな印象を、観ながらに感じてしまうのは難点だ。

謝罪のみを求めた裁判は、一見簡単に思える謝罪ながらも、二人の背景がいかに二人を縛りつけているのかを浮き彫りにする。
題材の深刻さからアカデミー賞外国語賞を得られなかったのも窺える。
判決はドローではない。そこに作り手の真剣さを見る。


原題 L'INSULTE

製作国 レバノン
製作国 フランス
製作 Ezekiel Films
製作 Tessalit Productions
製作 Rouge International
配給 ロングライド

監督 ジアド・ドゥエイリ Ziad Doueiri
脚本 ジアド・ドゥエイリ Ziad Doueiri
脚本 ジョエル・トゥーマ Joelle Touma
撮影 トンマーゾ・フィオリッリ Tommaso Fiorilli
音楽 エリック・ヌヴー Eric Neveux

出演 アデル・カラム Adel Karam
出演 カメル・エル・バシャ Kamel El Basha
出演 カミーユ・サラメ Camille Salameh
出演 リタ・ハイエク Rita Hayek
出演 クリスティーヌ・シューイリ Christine Choueiri
出演 ジャマン・アブー・アブード Diamand Abou Abboud