スローターハウス5

店舗イメージ

公開日 1975/04/12  103分


★★★★★ 5.0


ジョージ・ロイ・ヒルが『明日に向って撃て!』と『スティング』の間に作った唯一のSF作品。
巨匠の異色作であり、バイオグラフィを見るにつけ、必ず目につくため、気になっていたものの未見の作品であった。
本作は所謂タイムパラドックスものであり、主人公は、過去(ドレスデン空襲)、未来(トラルファマドア星)を不随意的に移動する。
「行方不明の女優」と語られるように、また惑星に移った際の映像でも見られるように、他の時間帯に移っている間は、元の時間帯の肉体は消えているようで、タイムパラドックスの矛盾点は本作にも見て取れる。
その一方で、ドレスデン空襲後の後遺症に対する脳への電気ショックが、現在と未来の姿を誘発させたと解すれば、現在、未来はタイムスリップとも空想とも取れる。
現在の姿が空想の中だとするなら、飛行機が墜落しても死なないし、逆に死も怖くはない。
これらの表現の緩さでもあり解釈の自由さが、製作された時代の特徴でもあると感じる。
空間移動のリズムが観客に把握できないことや、数多の「タイムパラドックスもの」が作られた現代では既に特別な作品ではない。
印象深いのは、時代が変わろうが、周囲でどんな悲劇が起ころうが、あくまでも傍観者的な主人公だ。
信じ込みやすい性格で、エゴが薄くなんでも受け入れる性格は、時間を超越、達観したようにも見える。

この監督の作品でも稀な感情移入し辛い性格である。
私も知らなかったドレスデン空襲を描いた作品であり、グレン・グールドによるオープニングからの音楽は美しいものの、製作後半世紀近くを経た今でもみずみずしいという表現を持った作品ではない。
スローターハウスとは、食肉処理場、畜殺場。
特に見なくても大丈夫、な作品だった。


原題 SLAUGHTERHOUSE-FIVE

製作国 アメリカ
製作 Universal Pictures
製作 Vanadas Productions
配給 ユニヴァーサル映画
配給 CIC 

監督 ジョージ・ロイ・ヒル George Roy Hill
原作 スティーブン・ゲラー Stephen Geller
脚本 スティーブン・ゲラー Stephen Geller
撮影 デデ・アラン Dede Allen
撮影 ミロスラフ・オンドリチェク Miroslav Ondricek
音楽 グレン・グールド Glenn Gould

出演 マイケル・サックス Michael Sacks
出演 ユージン・ロッシュ Eugene Roche
出演 ロン・リーブマン Ron Leibman
出演 シャロン・ガンス Sharon Gans
出演 ヴァレリー・ペリン Valerie Perrine
出演 ジョン・デナー John Dehner
出演 ペリー・キング Perry King