蜘蛛の巣を払う女

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公開日 2019/01/11  115分


★★★★★ 5.0


原題は「The Girl in the Spider's Web」。
邦題のニュアンスとは異なる。
原作は所謂ミレニアム3部作ではなく、また作者のスティーグ・ラーソンが既に亡くなっているため、出版社公認の作家デヴィッド・ラーゲルクランツが発表した第4作に当たる作品。
実に7年振りの続編だ。
本作の鑑賞前にデヴィッド・フィンチャーの前作を再見したが、記憶よりもよく出来ていて驚いた。
フィンチャー監督作は製作費がバカ高く、前作の興行成績では続編は難しいと噂されていたので、続編は嬉しいのだが、本作へのハードルは高い。
さて、本作はフィンチャーは製作に回り、スタッフ、キャストとも一新されている。
天才ハッカーである主人公リスベットはルーニー・マーラからクレア・フォイに変更。
病的さとアクションを両立させなさなければならない難役である。
前作のルーニー・マーラは病的さや異常性が際立っていたが、今作はかなりアクションに傾いているせいで、かなり健康そうに見える。

まあ、カーチェイスや銃撃戦は当たり前、爆破シーンも普通にある。
好みの分かれるところであろうが、個人的には前作の雰囲気の方が良かった。
ただ、前作のルーニー・マーラの病的なか細さでは、今回のバイクや車などのアクションは無理があるのも解る。
テーマは世界的な危機レベルとなる。前作は「金田一シリーズ」で本作は「007シリーズ」くらいに飛躍している。(解り難いか…)
ハッキング技術も意外性や痛快さは楽しめるものの、現実にはありえないレベルだ。
追跡車両のエアバッグを作動させるとか、古城内の人の動きまで把握できてしまう。
このSFレベルまでできてしまうと、次作があるかは分からないものの、大変だと思う。
スウェーデンという舞台、悲劇的な過去を抱えながらDVという悪を成敗する病的な天才ハッカーという設定は魅力的であるが、飛躍しすぎた感はある。
ハリウッド・アクション作品としては楽しめたが。

本作のもう1本の根幹であるリスベットのルーツ、妹の存在については、ラストで対峙することになるが、「DVを絶やす正義の使者はなぜ私のところへ来なかった?」と問う妹に対して「あなたは父を選んだ」という回答は答えになっているようで、納得させるには足りていない。
作中、リスベットはDVに苦しむ人妻を助けるシークエンスがあるが、この理屈で言えば、妻が選んだ夫なのだ。
ミレニアム・シリーズの原作は10作程が予定されており、次作は年内に発表の予定だ。
気に掛かるのは、幼いリスベットの家を出た後に予想される過酷な境遇だが。
さて、映画版の次作はあるのか、そして私にそれを追う気は起こるのだろうか。

原題 THE GIRL IN THE SPIDER'S WEB

製作国 アメリカ
製作 Columbia Pictures Corporation
製作 Metro-Goldwyn-Mayer
製作 New Regency Pictures
製作 Scott Rudin Productions
製作 Yellow Bird Films
配給 ソニーピクチャーズエンターテインメント

監督 フェデ・アルバレス Fede Alvarez
製作 スコット・ルーディン Scott Rudin
製作 オーレ・ソンドベルイ Ole Sondberg
製作 ソーレン・スタルモス Sren Strmose
製作総指揮 ロバート・J・ドーマン Robert J. Dohrmann
製作総指揮 リーネ・ヴィンテル・スクイユム・フンク Line Winther Skyum Funch
製作総指揮 デヴィッド・フィンチャー David Fincher
原作 ダヴィド・ラーゲルクランツ David Lagercrantz
脚本 ジェイ・バス Jay Basu
脚本 フェデ・アルバレス Fede Alvarez
脚本 スティーヴン・ナイト Steven Knight
撮影 ペドロ・ルケ Pedro Luque
プロダクションデザイン イヴ・スチュワート Eve Stewart
衣装デザイン カルロス・ロサリオ Carlos Rosario
編集 タティアナ・S・リーゲル Tatiana S. Riegel
音楽 ロケ・バニョス Roque Baños
キャラクター創造 スティーグ・ラーソン Stieg Larsson

出演 クレア・フォイ Claire Foy
出演 スヴェリル・グドナソン Sverrir Gudnason
出演 レイキース・スタンフィールド Lakeith Stanfield
出演 シルヴィア・フークス Sylvia Hoeks
出演 スティーヴン・マーチャント Stephen Merchant