
公開日 2016/06/18 120分
何を見せられているのだろうと思う。
通り魔殺人犯(次男)の家族と獄中婚する女の物語。
家族の全員がそれぞれどこかおかしく、特に三浦友和演じる父親は、昭和の遺物的な独善的、強権的な家長ぶりを見せる。
怪物に見えさえする圧倒的な存在感ではあるが、こんな父親は過去には幾らでも存在しただろう。
だが今の時代にはそぐわない、恐竜的に絶滅している父親像ではある。
この父親が営む金物店も同様に昔ながらの古びた佇まいである。祖父から譲り受けた店であることから遺産としか思えないが、この店では一人の客さえ見ることができず、家計の闇を窺わせる。
その一方で、君主的な父親は妻が働くこと許さない。
癇癪持ち、DV。当然、夫を毛嫌いする妻。
そして主張のまったくない兄、引きこもりの弟。
父親が居る時の家庭の暗く張り詰めた緊張感。
やがて当然のごとく、母親の出奔、そして兄の失業と自殺で家庭は崩壊していく。
そんな家庭ではあるが、これだけでは通り魔殺人犯を生む土壌とは見えない。
「一発逆転してみせますよ。」と繰り返し呟く次男はどこか類型的ではあるものの、通り魔殺人犯個人の心理のみを描いたものではない。家族を描くことで透けて見えるという構図なのだろう。
結局、特定の個人のみから犯罪を導き出すことはできないということなんだろうか。
殺人犯となった次男と結婚する女性には何かが欠落しているのは明らかで、時折見せる偏狭的な価値観は不気味ではあるが、「3人殺したら俺と結婚してくれるのか?」という父親の問い掛けには、ラストでやっとそこに行き着くのかという印象だ。
いずれも、普通に見えて近くには居て欲しくない独善的なモンスターを演じた三浦友和と田中麗奈の存在感は見事。
「三浦友和が上手い」みたいな評価があるが、いやいや昔から上手いよ。田中麗奈は磨きがかかってきた。
長男を演じた 新井浩文は逆に普通の役もするんだなという印象。
日常の中で起こる通り魔殺人の恐ろしさはよく描かれていると思う。
「あれっ、何?サバイバルナイフじゃん。」「なんで?」みたいな。
コピーの「俺が一体、何をした。」が重い。
製作国 日本
製作 「葛城事件」製作委員会
製作 ファントム・フィルム Phantom Film Co.,Ltd.
製作 テレビマンユニオン
製作 コムレイド COMRADE
配給 ファントム・フィルム Phantom Film Co.,Ltd.
監督 赤堀雅秋 Akahori Masaaki
製作 杉田浩光 Sugita Hiromitsu
製作 西田圭吾 Nishida Keigo
プロデューサー 藤村恵子 Fujimura Keiko
ラインプロデューサー 金森保 Kanamori Yasushi
エグゼクティブプロデューサー 小西啓介 Konishi Keisuke
脚本 赤堀雅秋 Akahori Masaaki
撮影 月永雄太 Tsukinaga Yuta
美術 林千奈 Hayashi China
編集 堀善介 Hori Zensuke
音楽 窪田ミナ Kubota Mina
出演 三浦友和 Miura Tomokazu
出演 南果歩 Minami Kaho
出演 新井浩文 Arai Hirofumi
出演 若葉竜也 Wakaba Ryuya
出演 田中麗奈 Tanaka Rena
出演 内田慈 Uchida Chika