
公開日 2013/06/22 117分
原作は『悪人』『怒り』などの吉田修一。
本作は秀作『悪人』との共通点も多いので、比較してみるのも面白いかもしれない。
どちらも罪を犯した人間の、罪との向き合いに主眼が置かれる。
本作では殺人ではなく、レイプ事件であり、被害者が生きている。
そのため肉親を亡くした痛みを描くことは排除され、
本人の苦しみのみに焦点が当てられる。
但し、同類の罪を犯したとしても、痛む人間とそうでない人間が描かれることなどは共通している。
『悪人』の岡田将生と本作の山田孝之がそうだ。
"幸せ"、"幸せになりたい"が、現代の大きな価値観である中で、「幸せになりそうだったから別れた」という夫婦の形は、強烈なアンチテーゼである。
物語の序盤で"加害者"、"被害者"というステレオ的な見方の愚かしさが持ち出されるが、罪を犯された者、犯した者はどちらも不幸になるが、
幸せ、不幸せ以外にも人生の価値観はあることを示している。
幸せを否定した二人、特に真木ようこには物欲がない。
ラストの大森南朋の問いかけはこれを強調するものであるが、くどいのであまり好みではない。
ただ、最近の映画ではマイナーになりつつあるテーマを描き続ける原作者、製作陣には大いに好感が持てる。
原作は読んでいないのだが、『悪人』と比べると社会性はかなり薄い。
『悪人』のベースにあった地方経済の疲弊や出会い系サイトといった社会問題的な提起は薄く、それとは違って、真紀ようこの後を黙って歩く大西信満の情景を、詩的に描くことに力点が置かれている。
ただこの辺りの詩的な情景は、例えば北野武作品などには及ばない。
道行きの果てに辿り着いた渓谷の描写もそれほどの効果を上げているように思えない。
原作通りのタイトルなのだが、このタイトルからは惹かれるものがなかった。
小説としてならともかく、映画としてはいいタイトルとは思えない。
原題 さよなら渓谷
製作国 日本
製作 「さよなら渓谷」製作委員会
製作 SDP SDP
製作 ステューディオスリー Studio3 INC.
製作 新潮社
配給 ファントム・フィルム
監督 大森立嗣 Omori Tatsushi
製作 細野義朗 Hosono Yoshirou
製作 重村博文 Shigemura Hirobumi
プロデューサー 森重晃 Morishige Akira
原作 吉田修一 Yoshida Syuichi
脚本 大森立嗣 Ohmori Tatsushi
脚本 高田亮 Takada Ryo
撮影 大塚亮 Ohtsuka Ryo
美術 黒川通利 Kurokawa Michitoshi
編集 早野亮 Hayano Ryo
音楽 平本正宏 Hiramoto Masahiro
エンディングテーマ 真木よう子 Maki Youko
出演 真木よう子 Maiki Youko
出演 大西信満 Ohnishi Shima
出演 鈴木杏 Suzuki An
出演 井浦新 Iura Arata
出演 木下ほうか Kinoshita Houka
出演 大森南朋 Ohmori Nao
出演 三浦誠己 Miura Masaki
出演 鶴田真由 Tsuruta Mayu
出演 池内万作 Ikeuchi Mansaku
出演 木野花 Kino Hana
出演 池内万作 Ikeuchi Mansaku