スポットライト 世紀のスクープ

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公開日 2016/04/15  128分


★★★★★★★ 7.0


今年のオスカー受賞作。
カトリック教会の暗部を告発する題材は、アカデミー会員は保守派が多いとの理由で受賞は難しいと噂されていた。
ところが蓋を開けてみると、である。
作品自体が良くできているのは勿論だが、このように正義を謳った作品が評価されるのは久しぶりではないだろうか。

初詣で神社には行くものの無神論者の多い日本人の感覚と、カトリック信者の多いアメリカでは、そのそも神の捉え方して異なるため、アメリカ人の感覚から学ぶことになる。
肌で感じることのできる製作側(アメリカ人)とは、作品自体の受け取り方も異なるとは思う。

権力に対する批判精神はジャーナリズムの根幹であり、その権力が巨大あればあるほど、腐敗が大きければ大きいほど、ドラマは劇的となる。
日本人の多くは、巨大権力が何かということよりも、そこに立ち向かうジャーナリストのダイナミズムに惹かれるのだと思う。

腐敗の本質はカトリック教会の神父による児童虐待だ。

地方紙の記者チームは、ボストンだけでおよそ90人の神父が千人以上の児童を虐待しているという事実に突き当たる。
しかもバチカンはそれを黙認していると思われる。

「神に逆らうことなどできない」という被害者の言葉は、神父=神と言っている。
私の持たない認識だ。
被害者とその家族の描写や演技が繊細なところも本作の特徴だ。

一方、ある加害者は「喜びを感じていない(欲望に駆られてはいない)」という理由で、罪の意識さえない。
教義のすり替えは明らかなのだが、これがまかり通る特殊な世界とその閉鎖性が恐ろしい。
あまりにも多い加害者側の「組織」にあまり触れられていないのは残念なところで、教会への非難の集中を避けたのだろうか。

「記事にしない責任は?」と問う記者の使命感、チームの一体感。
彼らの功績は感動的で称賛に値する。
だが「彼は生きているだけでも幸運だ」とまで言われる被害の歴史も忘れてはならない。
そして腐敗した権力に対して、勝つのが常ではなく、敗れるケースもあり得ることも。

ガッツ溢れるマーク・ラファロも、正義感溢れるレイチェル・マクアダムスもいい。
カッコよすぎるくらいだが。
過去に糾弾をなしえなかった経験を持ちながらもチームを纏めるマイケル・キートンといい、こんな職場で働きたい典型とさえ思える。

本作の表現は抑制が効いていて情緒に流されない。
"硬い""地味"な印象をヨシとするオスカー受賞作だ。

原題  SPOTLIGHT

製作国 アメリカ
製作 Participant Media
製作 First Look Media
製作 Anonymous Content
配給 ロングライド
配給 バップ 

監督 トム・マッカーシー Tom McCarthy
製作 マイケル・シュガー Michael Sugar
製作 スティーヴ・ゴリン Steve Golin
製作 ニコール・ロックリン Nicole Rocklin
製作 ブライ・パゴン・ファウスト Blye Pagon Faust
製作総指揮 ジェフ・スコール Jeff Skoll
製作総指揮 ジョナサン・キング Jonathan King
製作総指揮 ピエール・オミディアー Pierre Omidyar
製作総指揮 マイケル・ベダーマン Michael Bederman
製作総指揮 バード・ドロス Bard Dorros
脚本 ジョシュ・シンガー Josh Singer
脚本 トム・マッカーシー Tom McCarthy
撮影 マサノブ・タカヤナギ Masanobu Takayanagi
プロダクションデザイン スティーヴン・カーター Stephen Carter
衣装デザイン ウェンディ・チャック Wendy Chuck
編集 トム・マカードル Tom McArdle
音楽 ハワード・ショア Howard Shore

出演 マーク・ラファロ Mark Ruffalo
出演 マイケル・キートン Michael Keaton
出演 レイチェル・マクアダムス Rachel McAdams
出演 リーヴ・シュレイバー Live Schreiber
出演 ジョン・スラッテリー John Slattery
出演 ブライアン・ダーシー・ジェームズ Brian d'Arcy James
出演 ビリー・クラダップ Billy Crudup
出演 スタンリー・トゥッチ Stanley Tucci
出演 ジェイミー・シェリダン Jamey Sheridan