
公開日 2006/08/12 111分
強烈なインパクトだった『父と暮らせば』に続く黒木和夫脚本・監督作品。
前作と同様に、戦争に人生を狂わされた人々が描かれる。
前作が原爆という狂気的な兵器に被われた作品であったのに対して、こちらは特攻という狂気に被われている。
ただ本作ではごく普通の、平凡に見える家庭の暮らしが、ユーモラスな会話とともに淡々と描かれていく。
オープニングから佇む老夫婦、どこにでもありそうな会話から、二人の深い傷へと物語は進む。
こんな傷はこの時代を生きた人々には当たり前なのかもしれない。
両親を空襲で亡くし、恋人をも亡くした主人公は大泣きもするが、常に明るい。
そしてその気丈な振る舞いからは心の痛みは見えない。
好きな人が、見知らぬ人を残して消えてしまった後の、意を決した表情が彼女の芯の強さを見せて印象的だ。
食卓で遣り取りされる会話は「見事」に尽きる。脚本は一瞬の隙もなく抜群だ。
『お赤飯はお赤飯らしく、らっきょうはらっきょうらしく食べたい。弾に当たらないようになんて思って食べたくない。』こんな些細だが重い言葉がどこの食卓でもあったのかもしれない。
舞台劇のようなセットは前作同様。その意図ははかりかねるが、会話に集中し易い雰囲気はある。
出演者も前作同様に少ないが、過不足のない適役が配置されている。
戦時中の悲劇を、どこの家庭でもあったように自然に見せる描写は深い。
そしてそれらもまた風化していく時代の流れも同時に描かれている卓越した作品だと思う。
主人公の老夫婦の老けよう(メイク)がもっと自然ならよかった。
この作品、キネ旬データベースのジャンル分けで「ラブロマンス」。これだから、映画のジャンル分けって難しい。
原題 紙屋悦子の青春
製作国 日本
製作 バンダイビジュアル
製作 電通アドギア DENTSU AD-GEAR INC.
製作 テレビ朝日
製作 ワコー Wako Co., Ltd.
製作・配給 パル企画
監督 黒木和雄 Kuroki Kazuo
製作 川城和実 Kawashiro Kazumi
製作 松原守道 Matsubara Morimichi
製作 亀山慶二 Kameyama Keiji
製作 多井久晃 Tai Hisaaki
製作 鈴木ワタル Suzuki Wataru
企画 深田誠剛 Fukada Seigou
企画 久保忠佳 Kubo Tadayoshi
企画 梅澤道彦 Umezawa Michihiko
原作 松田正隆 Matsuda Masataka
脚本 黒木和雄 Kuroki Kazuo
脚本 山田英樹 Yamada Hideki
撮影 川上皓市 Kawakami Kohichi
美術 安宅紀史 Ataka Norifumi
衣装デザイン 宮本茉莉 Miyamoto Mari
編集 奥原好幸 Okuhara Yoshiyuki
音楽 松村禎三 Matsumura Teizou
出演 原田知世 Harada Tomoyo
出演 永瀬正敏 Nagase Masatoshi
出演 松岡俊介 Matsuoka Syunsuke
出演 本上まなみ Honjyo Manami
出演 小林薫 Kobayashi Kaoru